二口渓谷日陰盤司アイスクライミング

　二口渓谷日陰盤司アイスクライミング

2023年２月19日(日)～21日(火)
　メンバー：藤原豊さん、小田中智
　ルート：日陰盤司左ルート下部のみ

二口渓谷
　二口峡谷は仙台市の西部に位置し、名取川上流に広がる峡谷で全長は８kmある。下流部は県立自然公園二口峡谷に属し、上流部は蔵王国定公園に選定されている。
　下流には有名な秋保温泉があり、見所は日本の滝100選の秋保大滝、天然記念物の姉滝、巨大な岩壁が立ち並ぶ磐司岩がある。
　アイスクライミングエリアは広大で、風の洞沢、風の洞、奥蔭、日陰盤司、裏盤司、西盤司の６つエリアがあり、氷の長さも１ピッチから３ピッチのマルチまである。回り込んでトップロープを掛けれるルートはなく、ほとんど垂直の氷がなので中級から上級者向けのエリアである。
　国内では数少ないスポートミックスルートも存在し、ドライツーリングで登り、氷柱に乗り移るミックスルートを楽しめる。標高が低いため氷の適期は短く、氷質も変化しやすい。

　昨年から目をつけていた場所であり、藤原ちゃんと２泊３日で行くことになった。予定ルートは、１日目は奥蔭北斗星、２日目は日陰盤司右ルート・左ルート、３日目が奥蔭ジェットストリュームアタックと欲張りな計画とした。

19日(小雨)
　日赤駐車場６時に集合し宮城県に向かう。サービスエリアで恒例となった朝食を食べる。今日の天気は昼頃から上がる予報になってしまったので、今日は水場のキャンプサイトで終わることになるかもしれない。
　仙台宮城ICで高速道を降り、国道286号を秋保温泉へ向かう。二口渓谷ビジターセンターのすぐ奥に駐車場があり、車１台が停まっていた。小雨が降っているので出発は控えるが、天気予報では昼過ぎには雨が上がる予報だ。
　ここでは、まず車の中で寝ることにする。昼近くの天気予報では雨上がりは夕方となってしまったので、仕方ないので昼飯を食べに秋保の町まで下がる。夕方になっても雨は止まないので、今夜の寝ぐらは秋保大滝駐車場とする。ここは水も売っているしトイレもある。
　いやぁ、まる１日も車で待機したのは初めてである。テントで乾杯し、明日の好天を願う。

20日(曇り)
　４時起床。雨は明け方まで降っており、風もずいぶん強く吹いていた。駐車場から秋保ビジターセンターまでは車で10分ほどの距離で、当然ながら車はいなかった。
　私はスノーシュー、藤原ちゃんはワカンを付けて林道を歩き始めた。昨日の雨でトレースは硬くなっており、冬の観光ツアーもあるせいか大人数の足跡があった。
　歩き始めて45分で姉滝に着いたが、痛い足は両足とも悲鳴をあげていた。姉滝は天然記念物に指定されており、沢沿いには遊歩道が姉滝まで続いており、四季折々に景観を楽しめるみたいだ。
　テン場まではあと半分くらいだろうか？ザックの重みで肩まで痛くなってきた。左の沢向こうには小枝の隙間から、岩壁から流れ落ちるように氷瀑が見えてきた。
　テン場は二口沢本流に架かる橋のすぐ手前で、近くには水場があり、駐車場からここまで4.1kmの距離だ。ここは一昨日のパーティがテントを張った所で平らになっていた。
　テントを張って登攀用の荷物を仕分けるが、このままテントで眠りたい気分でもある。水場は橋を渡ってすぐの所であり、トレースと別れ左の山の斜面へと登って行く。
　１パーティのトレース跡をたどって行くが、ツボ足の私は潜るし足が痛いのでなかなか進まない。急斜面を登ると岩壁に突きあたり、先頭の藤原ちゃんはトレースに従って右に回り込んでドンドン進んで行ってしまった。
　ガイドブックでは岩壁から左にトラバースとあるが、藤原ちゃんの姿が見えないので仕方なく追って行った。しばらくして合流して戻り返し、左にトラバースすると日陰盤司左ルートの氷瀑が見えた。先行者のトレースは奥蔭エリアに行くものと思われる。
　左ルートの中間部は崩落しているように見えるので、とりあえずその下まで行くことにする。藤原ちゃんをおだてたが、リードを譲ると言われたので仕方なくリードすることにした。若い頃はジャンケンをしてトップを取りあったものであるが、年老いた現在はフォローを取りあうようになってしまった。
　85度の５mを越すと傾斜が緩くなり10m登って、スクリュー２本を刺してピッチを切る。氷は水分を大量に含んでいるのでアックスは刺さり易いが、スクリューを刺すと割れやすい部分もある。
　70度から80度の登りやすい所の上に、チョックストーンが見える。登って行くと出口は氷が薄くなり、スクリューが効きそうもないので、チョックストーンの５m手前で止めることにした。スクリュー１本と下降用にⅤ字スレットを作ろうとするが、穴から水が流れ出し捨て縄が中々入って行かない。
　やっと穴に細引きが通り、スレットとスクリューを支点にして藤原ちゃんの所まで下る。今の状態はトップロープの状態なので、藤原ちゃんを登らせ一番下まで下降させる。
　私が再び登り返し、スクリューを回収しスレットで懸垂下降する。氷の中に捨て縄が見えるので気持ちが良いものではないが、これがけっこう効いており静かに懸垂下降するには十分な強度がある。
　左には氷瀑があり下部が崩落しており、当初はそれが左ルートでいま登った所が右ルートだと思っていた。家に帰り調べてみると、崩落した所はもともと氷が繋がらない所であるが、その上はバーチカルな氷が突っ立っていた。
　右ルートの中間部も崩落しているので、あとルートはないのでこれで止めることにする。結局35mの長さしか登ってなかったが、この氷の状態では仕方がない。
　下りは特に痛い足を引きずりながら、ゆっくりとテントに下って行った。さあ、いよいよ宴会タイムである。私の献立は豚足であり、美味しく思う豚足を藤原ちゃんに勧めるが食べてはくれなかった。夜半から雪が降り始めた。

駐車場から林道入口

歩き始めてすぐに、左の沢にある滝

姉滝

右がたぶん日陰盤司左ルート、左の氷瀑は下部に繋がっていない氷瀑

裏盤司の岩場

橋のすぐ手前

橋のすぐ先のナメ滝

左にトラバースし始めると見える

日陰盤司左ルート

１ピッチ目リードする小田中

２ピッチ目上にチョックストーンが見える

上の氷が薄いのでここで止めた

左にある繋がらない氷瀑

21日(曇り)
　テントから顔を出すとけっこう雪が積もっており風もあるので、今日は登らないことにし再びシュラフに潜る。こんな状態の時は誰かが「止めよう！」という言葉をお互いに待っているのである。
　８時に起き出し食事して外に出ると、15cm程の新雪が積もっていた。再び重いザックを背負い、雪を漕ぎながら歩いて行く。姉滝を過ぎて間もなく、スキーで７人ほどの老人クラブパーティがさっそうとやってきた。歳を重ねても大人数の仲間で行動するのは羨ましいことで、私たちもできるかと思うとNOだと思うのである。
　仙台市内で昼飯を食べ、盛岡へと高速道に乗った。

　３日間の前後が天気に恵まれず登れなく、１本のルートの半分しか登れなかったが、初見で二口渓谷に来れたことに意義があると思う。
　今の私には長いアプローチは無理になったので、もうここには来れないかもしれないが、出来る限りアプローチが短い場所で、もうしばらく遊ばせてもらいたいと願う。